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密約~日米地位協定と米兵犯罪

 表題は、ジャーナリスト・吉田敏浩さんの著書名(2010年、毎日新聞社刊)です。
 沖縄では、長年にわたって米兵犯罪や米軍事故が絶えることがなく、基地撤去の県民世論が大きくなっていますが、民主党政権は米軍基地は「抑止力のために必要」という理由で、普天間基地を辺野古沖に移転するという自民党政権時代の方針に後戻りしてしまいました。米兵犯罪の温床となっている「日米地位協定」の問題について、この本は教えてくれます。
 日米両政府による核兵器持ち込みなどに関する密約問題については、昨年の政権交代を機に調査が進み、今年3月9日に外務省の報告書が公表されました。しかし、米兵の犯罪の温床となっている「日米地位協定」に関する密約問題はまだ残されており、吉田さんは、「不平等な日米関係を根底から考え直すためにも、地位協定の密約の闇に解明の光を当てるべき時がきている」と述べています。
日米地位協定は、「全部で28条あり、施設・区域(基地や演習場など)の提供方式、米軍の基地使用権、米軍部隊の出入国や国内移動の権利、米軍による日本の公共役務の利用優先権、関税や課税などの免除、物資や労務の調達方式、駐留経費の負担方式、刑事裁判権、民事裁判権などに関する規定」があり、米軍にさまざまな特権を認めています。この協定の背後に、米軍優先を絶対化する密約群が隠されていると、吉田さんは指摘しています。その一つが「民事裁判管轄権に関する密約」で、それによると「在日米軍の事故や米兵犯罪の被害者が損害賠償を求める民事裁判に、米軍側は米国の利益を害するような情報は証拠などのために提供しなくてもよく、また、そのような情報が公になりそうな場合は米軍人・軍属を証人として出頭させなくてもいい」ことになっています。
 1977年9月27日、横浜市緑区(現青葉区)の住宅地に米海軍機RF-4Bファントム戦闘機が墜落して、3歳と1歳の子どもが死亡し、他に重軽傷6人、家屋全焼1棟、損壊3棟の大きな被害をもたらした事故の損害賠償を求める民事訴訟において、被告である米軍機乗務員2人は出廷せず、米軍の調査報告書も一切提供されなかったのは、この密約があったためです。しかし、法務省も外務省もこの密約の存在を認めていません。
 私は本書を読んで、「密約」が日本国憲法がうたう二つの主権、つまり国民主権と国家主権を脅かしていると感じました。核兵器持ち込みに関する密約は公表されたものの、それを撤回する両国の手続きはされていません。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」(日本国憲法前文)のですから、公正と信義に反する「密約」は直ちに一掃すべきです。
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