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公務員の政治活動を一律に禁止することはできない

 12月7日、最高裁第二小法廷において、堀越事件(2004年3月)と世田谷事件(2005年9月)について、いずれも上告を棄却し、堀越さんの無罪を確定しましたが、宇治橋さんを有罪とする高裁不当判決を維持しました。
 国公法弾圧事件弁護団と国公法弾圧2事件の勝利をめざし、公務員の政治的・市民的自由をかちとる共闘会議は、それぞれ声明を出し、言論・表現の自由を保障する憲法21条に違反する国公法・人事院規則について、最高裁判所が違憲判断を行わなかったことに抗議しました。また、堀越さんの無罪確定によって、国公法・人事院規則で示されている政治活動の禁止については限定的であるべきとの判断が示され、管理職的地位になければ、勤務時間外に職場を離れた場所で政党ビラを配布することは自由であるとされ、「言論・表現の自由を求める長いたたかいのなかでの大きな前進である」と述べました。
 堀越さん、宇治橋さん、弁護団のみなさんの長期にわたるご奮闘に心から敬意を表します。私たちは、引きつづき国公法・人事院規則の違憲性をただし、維新の会や自民党などが企図する地方公務員の政治活動を禁止する地方公務員法改悪と政治活動禁止条例の制定を許さない世論と行動を広げていかなくてはいけません。
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【声明】国公法弾圧2事件の最高裁判決について
                            2012年12月7日
 国公法弾圧2事件の勝利をめざし、公務員の政治的・市民的自由をかちとる共闘会議

 本日、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は、国公法弾圧2事件について、いずれの上告も棄却する判決を言い渡した。堀越事件については、無罪を確定させ、世田谷事件については、不当にも有罪判決を維持した。
 2事件は、国民の言論・表現の自由と公務員の権利を争うものであり、私たちは最高裁に対して、大法廷に回付し、1974年の猿払判決を変更して「国公法は憲法違反」との判断を求めてきた。
 2事件は、いずれも国家公務員が休日に職場とは離れた場所で政党のビラを配布したものである。仕事や職場に何ら影響はないことが公判でも明らかにされ、厚労省、社会保険庁並びに人事院からも何の注意も処分もなかった。東京高裁では、堀越事件では一審の不当判決(罰金10万円・執行猶予2年)が破棄され逆転無罪判決、世田谷事件では、猿払判決を形式的に適用して、有罪(罰金10万円)が維持された。
 この相対立する判決について、最高裁に対して、憲法を尊重する立場から統一的な判断が求められていた。この裁判に国民が高い関心をもっていることは、私たちが集めた18万の署名にも示されている。最高裁が、この要求を拒否し、口頭弁論さえ開くことなく2事件の判決を言い渡したことに対し、強く抗議するものである。

 今回の最高裁判決は、国公法の政治活動禁止規定について、「公務員の職務遂行の政治的中立をそこなうおそれが実質的に認められるもの」が禁止の対象になると限定的に解釈した。
 そのうえで国公法弾圧堀越事件については、「堀越さんの行為は、公務員の職務の政治的中立をそこなうおそれが実質的に認められるとはいえない」とし、堀越さんの無罪を4人の裁判官全員一致で判決した。これは事実上、国家公務員の政治活動を全面的に刑罰で禁止する国公法と人事院規則を合憲とした猿払事件最高裁判決を変更するもので、憲法に保障された国民の重要な権利である「言論・表現の自由」を求める長いたたかいのなかでの大きな前進である。
 一方、世田谷国公法弾圧事件については、宇治橋さんを「管理職員等」にあたるとして「指揮命令や指導監督等をつうじて他の多数の職員の職務の遂行に影響を及ぼすことのできる地位にあった」と不当な解釈を行い、「勤務外のものであったとしても」「当該公務員およびその属する行政組織の職務の遂行の政治的中立性がそこなわれるおそれが実質的に生ずる」とし、有罪判決を維持したものである。しかし、これには、須藤正彦裁判官の「宇治橋さんも無罪とすべき」との反対意見が付けられている。
 今回の判決は、「すべての公務員に対して、勤務外も含めて一律全面的に政治活動を禁止」した『猿払判決』と大きく矛盾するものであり、大法廷回付をして猿払判決を見直すべきであった。

 いま、脱原発・震災復興・消費税問題など日本の将来の重要課題について、さまざまな意見を持つ人びとが自由に声をあげて行動し、「表現の自由」「知る権利」が保障されることが一層求められているなかで、堀越事件の無罪判決の確定は大きな意義を持つ。そして、堀越さんを尾行・盗撮して国公法違反事件を立件した公安警察に対する批判となるものである。
 また、最近日本維新の会や自民党など、この政治活動禁止規定を地方公務員にまで広げて、公務員を統制しながら強権的な政治をすすめようとする動きが強まっており、今回の判決はこうした動きに歯止めをかけるものとなる。公務員一人ひとりが自分の考えを持ち、自由にものが言えてこそ、国民や住民の立場に立った行政をすすめることができる。
 私たちは、9年近くにわたるたたかいのなかで、支援していただいた皆さんに心から御礼申し上げるとともに、ひきつづき言論表現の自由を守り、公務員攻撃の強権政治を許さないためにたたかうものである。
                  以上

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