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ヒロシマからの愛の伝言 ~映画「アオギリにたくして」

 一昨年(2011年7月)に他界された被爆体験の語り部、沼田鈴子さんをモデルにした小説『アオギリにたくして』(中村柊斗著)の映画を、今日、渋谷UPLINKで観ました。
 原爆によって人間としての、女性としての幸せを、ことあるごとに打ち砕かれながら、生き抜いた田中節子(沼田鈴子さんがモデル)の生きた軌跡が丁寧に描かれています。劇中の主人公は、フリーライターの片桐千草(菅井玲が演じる)。3・11から1年たった東北を取材しに行ったときに、福島で被爆アオギリの幼木を植えている場面に出会い、アオギリのおばあさん=田中節子について取材することを決意し、広島に向かいます。そこで節子の妹、良重に出逢い、節子の壮絶な人生を知ることになります。「被爆者が被爆者を差別する」という言葉に象徴されるように、広島に落とされた原爆は、人間の肉体だけでなく心も蝕んでいきました。
 若き日の節子の心の苦しみ、葛藤は、観るものの心を強く打ちます。
 物語はもとより、映画作品としてすばらしいものだと感じました。原作・脚本・監督がずべて中村柊斗さんであり、彼は、沼田鈴子さんをよく知る中村里美さん(シンガーソングライターでこの映画のプロデューサー)のお兄さんなのです。
 小説の一節を紹介してこの映画の核心に触れたいと思います。片桐千草の想い「本当は、語り部になってからの日々こそが田中節子の真骨頂なのだ。何十万という修学旅行生たちに被爆体験を伝え、世界を股にかけて八面六臂の活躍を見せる。しかし、その部分はすでに多くの著作が残されているし、平和公園の原爆資料館に入れば、語り部としての彼女の肉声を聞くこともできる。私が書かなければならないのは、そこではない。今まで誰も書くことのなかった、彼女の心の内側を切り取るのだ。そして、- 田中節子は、いかにして田中節子となったのか。その一点だけを描けばよい。それが私の仕事だ。」
 是非多くの人に、この映画を観ていただきたいです。そして映画で描ききれていない部分を、小説で読んでほしいです。この夏、心が震えた作品でした。
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