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世界と子どもの生活に平和を拓く

 季刊『人間と教育』第64号(民主教育研究所編集)の特集が「世界と子どもの生活に平和を拓く」です。内容を紹介します。
 特集に入る前に、堤未果さんのインタビュー「アメリカの新自由主義と貧困」があります。
堤さんは、オバマ政権下のアメリカで、学校教育の民営化がすすみ、チャータースクールはあっても子どもは学校に行けない、新自由主義政策によって作られた新しい貧困層が生きるために兵士になるという「経済徴兵制」を強いていることを示し、日本においては政府が憲法の理念とは違う方向(民営化)にすすむ時に、国民として立ち上がる人々になかで憲法9条と25条がつながっていくと話しています。
 特集の最初は、浅井基文さん(広島市立大学広島平和研究所)の「21世紀の世界平和への道を拓く」です。見出しを紹介します。一、21世紀は人類の歴史において如何なる使命を担う時代なのか (1)人権・民主(人間の尊厳)を実現する時代 (2)「力による」平和観の支配を「力によらない」平和観によって置き換える時代 二、20世紀の総括と21世紀の課題 (1)20世紀の総括 (2)21世紀の人類的課題 ①人間の尊厳に基づく新国際政治経済秩序 ②核兵器の廃絶
 次は、中西新太郎さん(横浜市立大学)の「現代の〈戦争文化〉と平和への希求」です。中西さんは、日本社会のなかで生きてはたらいている暴力性と若者の状況を考察して、「問題はしたがって、若者たちが抱く平和主義感覚、平和に生きることへの希求をそれとして正しく受けとめることであり、その希求を再び暴力的関係に回帰させることなく『社会化』することであろう。平和にかかわる教育は、この意味での『平和的生存』を具体的に獲得できるような展望と実践とをあきらかにしなければならない」と述べています。
 次に、佐貫浩さん(法政大学)の「平和の世界への構想を子どものなかに立ち上げる」、山田朗さん(明治大学)の「日本の近代-現代史像と戦争反省-」、その後に、広島の小中学校、東京の中学校、埼玉の高校における平和教育の実践が続きます。
 特集の最後は、大野一夫さん(歴史教育者協議会)の「戦後平和教育の展開」です。見出しを紹介します。一、原爆・空襲・沖縄戦から学ぶ 二、南京事件・慰安婦・強制連行-加害から学ぶ 三、戦争体験・戦争遺跡から学ぶ 四、平和主義・自衛隊・米軍基地から学ぶ 五、国連・紛争・貧困-国際法と地球的課題から学ぶ

 すべてを熟読して紹介したわけではありませんが、子どもたちを平和な社会の担い手として育んでいくために必要な今日的課題について論じられた、充実した特集だと思います。ご一読をお勧めします。
タグ:平和教育
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